一度でいいからホームパーティーなるものをやってみたかった。
アチラ製のドラマを見ていると、やたらホームパーティーを開いている。てかそんな場面が多い。
いや、アチラまで行かずとも、数年前ヒデがホームパーティーを開いている体のCMがあった。ヒデはデジカメでその様子を撮影し、すぐさまプリントアウトしてやる。
ホームパーティーの定義はよく知らないが、こんなことを実際にしたらまず嫌われるだろう。後でやれよ後で。相手がヒデだからみんなあきらめているのか?まぁ日本代表の合宿で、みんなでトランプとかしてるのに、ひとりだけ参加しないヒデのことだ。この程度の行動では皆ビクともしないのだろう。
ヒデの話はどうでもいい。ホームパーティーの話だ。
先日友人のEのところへ遊びに行った際、共通の友人であるR夫妻を呼ぼうという話になった。
メンツとしてはE、Eの彼女、R、Rの奥さん、そして自分の五人。五人かぁ。
その瞬間、頭に閃光が走った。線香ではない。閃光だ。
ほーむぱーてぃーができるじゃないかびっくりまーく
とはいえEの部屋は広いとはいえ、所詮うさぎ小屋にたとえられる日本国内のマンションだ。さすがに立食パーティーは無理で、ふつうにテーブルとイスを用意した。
これじゃただの食事会と変わらないのだが、違う。断じて違う。これはホームパーティーなんだ!そう自分に言い聞かせた。ついでにEにも言い聞かせた。
言い出しっぺの責務として料理を担当することになった。メシを食う以外、パーティーっぽいイベントは何もない。メシがすべてだ。つまり最大の任務を自ら志願したのだ。
志願兵はまず買い出しに行った。近所のスーパーとは置いてあるものがかなり違い、かなり苦労したが、それなりの食材が用意できた。
R夫妻が来る30分ほど前、おもむろに調理を開始した。各料理の調理時間を計算し、30分もあれば十分だ、そう認識していた。
30分後、ほぼ時間ぴったりにR夫妻がE宅に現れた。
ところがである。まだ全然料理ができていないのだ。
いったいどういうことだ!志願兵は焦りに焦っていた。
一人暮らしが長かったせいもあって、料理には慣れているはずだった。しかしこれが落とし穴で、今まで作っていたのはほとんどひとり分、多くてもふたり分でしかない。
今回は五人分だ。しかも一応ホームパーティー風にしたかったので、最低でも五品は必要だと考えたのだ。
五品を五人分。これは完全に想像を越えていた。大変なんてもんじゃあない。尽力しても全然終わらない。すでにR夫妻が到着してから30分以上経過している。
Eがせかしにきた。当たり前だ。おそらくみんな腹ぺこだろう。だからこんなに必死のパッチでやっているのだ。でもできないものはしょうがないじゃないか!
焦りと理不尽な怒りが空気を悪くしていたのはたしかだが、志願兵にそんなことを考える余裕は一縷の隙も残ってなかった。
やっと料理が完成した。自分が料理を作るというもの珍しさと気遣いもあって、幸いみんな喜んで食べてくれたが、志願兵は作り疲れで、もうお腹いっぱいの状態であった。
とりあえず一服しよう。たばこに火をつけた瞬間、忘れていた!パンを切ってだすのを忘れていたのだ。
急いでたばこの火を消して、再びキッチンに向かう。買ってきたフランスパンを包丁でスライスする。
それは鬼気迫る姿だったようで、後で聞いた話ではキッチンから「ウー!ウー!」とうなり声が聞こえていたそうだ。
R夫妻が帰り、死ぬほどあこがれていたホームパーティーが終わった。
祭りの後のなんとやらではないが、心身ともに疲れ果てていた。
ホームパーティーってこんな大変なものだったのか。もちろん甘い計算をして調理を志願した自分が悪い。
しかし、思うのだ。ホームパーティーではないにしろ、毎日家族分の食事を用意している主婦の、なんとエラいことよ!
大人数の料理作りは肉体労働である、と改めて認識させられた。今も昔も大家族の主婦は肉体労働をしているのである。
実際にやってみたホームパーティーで学んだのは、そんなことであった。