神戸出身だけあって、震災のことは何度も聞かれる。んで何度も話す。だから自分の中で完全にネタとして出来上がってしまった。
震災のことは、不謹慎だけど、ネタにするのは飽きている。もちろん思い出したくないという気持ちも存在するが。
なのであんまり人に話さないことを書こうと思う。
震災の当日、自分は実家にいた。当時大阪に住んでいた自分は、その日の夕方にかけつけたのだ。
実は家に着くまでに驚くべき体験をいくつもしたのだが、それは省く。
とにかく実家には自分、母親、弟、自分の彼女、弟の彼女、年老いた犬がいた。自分の彼女は一緒に車に乗っていったからだが、弟の彼女が何故うちの実家にいるかは不明。
前日は一睡もしてなかったので、とにかく一眠りする。目が覚めると、家に到着した時にはまだきてた電気は消えていた。そして真っ暗な中、母親が電池式のラジオを聞いていた。
まだ余震は続いていた。今後大きな余震がきたら、たぶん家は潰れるだろう。ここにいては危ない。そういう空気が流れていた。
逃げよう。しかし大きな問題があった。ガソリンがないのだ。まさか神戸がこんな状態になってると思わずのミスだが、それにしても、こんなことならもっとガソリンを入れてくるべきだったがどうしようもない。
とはいえしょうがない、では済まない。四の五のいってる状況ではないのだ。どこか開いてるスタンドがないか探しにいくことにした。とはいえ近所にあるガソリンスタンドはすべてダメだ。比較的被害の少ない北の方に向かうしかない。
どんどん北へ向かった。しかし走れば走るほど、被害が少ないのと同時に、ガソリンスタンドがない。あっても閉まってたりする。もう全然知らない場所まで走ってきてしまった。そして残りわずかのガソリンもついに底をつきはじめた。
もうダメか、と思った瞬間、一件の、営業しているガソリンスタンドを見つけた。
別にアテがあって走っていたわけではない。ただ当てずっぽうで、こっちの方にくればあるんじゃないかと思って走ってただけだ。
それが当たった。まさに奇跡の瞬間だった。
とんぼ返りで家に着くと、すでに母親他は支度を完了していた。
犬も含めて車に乗り込んだ。完璧に乗車定員数違反だが、この非常事態にそんなことをいってる場合ではない。
さっきまで自分はガソリンを入れるために車で走り回っていた。しかしわずか30分ぐらいの間に、また街の様子が変わっている。
信じられないぐらい空が赤かった。きっと夜になってあちこちで火災が発生したのだろう。それにしても赤い。
ふと祖母の言葉を思いだした。
戦時中、近くで空襲があると見に行ったそうで、とにかくキレイだった、といっていた。打ち上げ花火など問題にならないぐらいキレイだったそうだ。
なんて不謹慎な!と思う方もおられよう。しかしその時の自分もそうだった。あんなにキレイな空は見たことがない。
一週間ぐらい経った。余震もほぼおさまり、電気も復活、電車はダメなものの家も大丈夫のようだ。
この間親戚の家に世話になってた母親と弟は家に帰りたい、と言い始めた。おそらく犬も帰りたかったに違いない。
再び家族を車に乗せ、神戸へ向かった。とはいっても道路事情が壊滅的だったので、かなり大回りして神戸方面へ向かった。
途中、新興住宅地の造成中のそばを通った。
少し話はズレるが、当時、自分は「ポピュラス」というゲームに凝っていた。プレイヤーは神となり、土地を耕したり、地震などの天災を起こしたりすることができる。
なんだ、まさにポピュラスの世界じゃないか・・・。
こうやって住宅地を造成しているところもあれば、地震で築き上げた街があっという間に崩壊する。
でもこれはゲームじゃないんだ。現実なんだ。でもゲームに「神からのコマンド」があるように現実にも「神からのコマンド」があるのかもしれない・・・・。
現在。街は復興した。元通りではないが、神戸はそれなりに活況を取り戻した。
しかしそれも「神からのコマンド」がうまくいってゲームが順調に運んでいるだけなんじゃないか。神の手のひらで遊ばされてるのだろう、きっと。そしてまたいつかとんでもない「神からのコマンド」が発生するかもしれない、と思うと少しだけ恐ろしくなってくるのである。