2012年5月29日火曜日

コミックソングの到達点

コミックソングって何なんだろうなと思います。
「ロック」とか「ジャズ」のようにサウンドの特色で分けられてるわけじゃないし、ノベルティソングとの厳密な違いを正確にいえる人など誰もいないでしょう。
しかも広義にいえば、もしくは狭義にいえばみたいな境界線を決めることもできない。
コメディアンや芸人のレコード=コミックソングではないし。
でもそれじゃ話が続かないから、コメディアンor芸人が歌い、なおかつコミカルな要素がある曲をコミックソングと仮に定義付けします。

ところが新たにコミックソングを作ろうとしても、現状ぺんぺん草も生えないんですよ。それくらい刈り取られてるから。青島幸男作詞、萩原哲晶作曲編曲、植木等並びクレージーキャッツ歌唱の楽曲群にね。
それはホントに痛感するのですよ。アタシがクレージーキャッツの大ファンというのを抜きにしても、恐ろしいほど様々な手を使って、コミックソングの手立てを塗り潰している。数年遅れた後輩のドリフの時点で「有りものの楽曲をコミカルに味付けする」方向に逃げざるを得なかった。

コメディNo.1の「アホの坂田」(キダ・タロー作曲、ていっていいのか微妙だけど)や間寛平の「ひらけ!チューリップ」、そしてクレージーソングの重要なブレーンである宮川泰が手掛けた笑福亭仁鶴の「大発見やァ!」など、関西方面から名曲と呼んで差し支えないクオリティの楽曲が出たりしましたが、「ひらけ!チューリップ」や笑福亭鶴光の「うぐいすだにミュージックホール」の作者であり、ある種の天才といっていい山本まさゆきですらアニメの主題歌という枠でしかコミックソングを発表し続けることはできませんでした。

そんな中、唯一コミックソングをいう曖昧なジャンルに敢然と立ち向かったのがとんねるず、です。
とんねるずの何が凄いといっても、コミックソングの枠内で複数のヒットを出したことです。
コメワンにしろ間寛平にしろ鶴光にしろ第二弾は不発で、ことレコードセールスだけで語るなら完全な一発屋です。
しかしとんねるずは違った。
「一気!」から「雨の西麻布」、「歌謡曲」、「嵐のマッチョマン」、さらに「ガラガラヘビがやってくる」など、とにかく手を変え品を変え、時代とマッチングした楽曲を次々にリリースしました。

中には「とんねるずのやつはパロディばかりだからコミックソングとはいえない」という方もおられるでしょうが、クレージーキャッツだってジャズ小唄のパロディ「スーダラ節」、フランク永井から「ハイそれまでョ」、エノケン他が歌った「洒落男」から「無責任一代男」、軍歌、特に「麦と兵隊」から「これが男の生きる道」、童謡から「どうしてこんなにもてるんだろう」など、見渡せばパロディばかりなのです。

さてとんねるずですが、前に書いたように前期の中では「歌謡曲」が好きなのですが、現時点では最末期といえる「ガニ」は本当に凄い。「ハイそれまでョ」式に転調を活かした楽曲なのですが、二重三重の捻りがあって、まさしく「恐れ入りました」って感じです。2012年時点では「コミックソングの到達点」といえるでしょう。

石橋と木梨がヴォーカリストとしてまったくタイプが違うのもいい。特に木梨のヴォーカルはある意味植木等を凌いでる部分すらある。

その後「野猿」とか「矢島美容室」とかやってますが、やっぱり「とんねるず」名義でやってほしいなあ。ヴォーカルの対比を最大限に活かすには、やっぱふたりだけでやった方がいいと思うんだよな。