2009年5月30日土曜日

ツレうつ

ほぼリアルタイムでの更新はいつ以来だろうと考えると夜も眠れない。

いや本当は考えるまでもなかった。前回リアルタイムネタで更新した時も「ツレうつ」ネタだったからよくおぼえている。(ほとんど藤原紀香の話だったけど)
さてドラマのことだが、わりとどうでもよかったりする。いや、面白いとかがどうでもいいのであって、病気がああいうものだけに誤解をうむような内容だとちょっと困るな、と思っていたのだが、その点は問題なかった。
普通のドラマとして見た場合(まだ一回目だけだけど)、原田泰造が抜群によかった。彼の演技がすべてを支えているといっても過言ではない。

実はドラマ自体に語れることはこの程度なのだが、どうしても書きたいことがあった。
自分の知人で実際にうつを患った人がいる。しかも正確にはふたりいる。
そのうちのひとりはこのドラマを見ていたかは定かではない。が、もうひとりからは番組終了後連絡があった。
本人は自分がうつを患っていたことはオープンにはしていない。だから自分の日記にはこのドラマの感想は書かないだろうから代わりに自分が書いてみることにした。

知人はドラマを見て泣いたという。しかしちょっと方向性が変だ、うつになったことがない自分からすれば。
もちろんのことだが、ドラマの不出来が悲しくて泣いたのではない。感動して泣いたのだ。が、内容うんぬんではなく、当時を思い出して泣いたのである。
当時とは知人の病気が酷かった時期という意味だが、若干説明が必要になる。
知人は一番症状が酷かった時、ドラマの原作となった漫画「ツレがうつになりまして。」と出会った。この頃、うつ関連の書物を手当たり次第に購入していたというから、まあ必然の出会いといっていいだろう。
うつ関連の書物は意外とトンチンカンな内容のものが多いようで、本当に本物の精神科医が書いてるの?と首をかしげたくなるものも多いそうだが、「ツレうつ」は非常に軽いタッチで描いてあるにも関わらず勘所は押さえており、実際に自分も薦められるがままに読んだのだが、これは名著といっていいと思う。(特に続編である「その後のツレが・・・」がいい)
長々と書いたが、つまりはこういうことだ。
知人がこの本と出会ったのは一番症状の重い時のこと。そして放送されたドラマを見た。すると原作を初めて読んだ頃、そう、あの時の辛さを思い出して泣いたらしい。

そしてもうひとつ泣いた理由がある。
「ツレうつ」はいわゆるコミックエッセイと呼ばれるものだ。
このジャンルは西原理恵子の独壇場なのだが「ツレうつ」はあくまでコミックエッセイの軽さを維持しながら、バックボーンにものすごい重いものを持っていた。そして意外と調和している。
コミックエッセイの主人公はほぼ作者自身であり、わき役はカリカチュアした身近な人である。
「ツレうつ」もそうで、登場人物もドラマではいっぱいでてくるが原作ではほぼふたり。主人公の漫画家とその旦那、うつ病を発症するツレさんだけ。
ほとんどふたりしかでてこない。が、ふたりだけなのに内容がよくできていて、話のリードがうまい。
ただでさえ感情移入しやすい話なのだが、そこへ持ってきてこれだとする、こうなってくると読み手は自然と作者への感情移入が深くなる。
知人のもうひとつの感動の理由がわかってもらえただろうか。ドラマ自体よりも「ツレうつがドラマになった!」ことに感動しているのだ。
たとえるなら路上ライブやってた連中が、そしてその頃から応援していたファンが、というべきか。
そしてついに武道館でライブをやることになった。
「ああ、とうとうここまできたか・・・」と感涙にむせぶのと基本一緒だ。

これはちょっとやそっとでは真似できない。うつという重いテーマを真面目に、だけど軽身をもった作品に仕立るのは並大抵ではない。二番煎じがこれほど難しい作品も珍しいんじゃないだろうか。少なくとも自分は知らない。