2009年5月8日金曜日

松之助

センス=時代感覚だと思うが、これに長けたといえる人が今どれくらいいるのだろうと考えると夜も眠れない。

唐突だが、明石家さんまのいいところは、非常に師匠を尊敬しているのが見えるところである。師匠とはもちろん笑福亭松之助である。弟子入り志願をした時、さんまは(やがて師匠になるであろう)松之助に向かって「あんたはセンスがある」といったそうだが、ま、気持ちはわからんでもない。
今でもそういう「これはかなわない」と思わせるセンスを松之助が持っているからこそ、さんまも素直に尊敬できるのだろう。
自分から見ても松之助はセンスのカタマリのような人に見える。こと笑いのセンスというか発想力はさんまよりもずっと上に思える。

松之助のネタでずっと見たいと思っているのが「仮面ライダー」だ。これは仮面ライダー(いうまでもないがV3の前の)が放送していた当時でないとやる意味がないネタだから、今高座にかけるのは考えづらい。
記録もあんまりないのだが、小林信彦著「笑学百科」の中で、わずかながら採録されている。
「ライダーキック!ショッカーアホか!とこうなる」
何度も何度も思いだし笑いをしてしまうぐらい面白い。そしてすごい。
全編を聞いたわけじゃないので詳しいことはわからないが、この一節を聞く限り、仮面ライダーは完全にただのツッコミでしかない。逆にいえば悪の限りを尽くすショッカーどもはボケということになる。

ショッカーがボケてボケてボケ倒している。ライダー(正確には本郷猛と滝)も細かいツッコミを入れているのだが、それもかまわずショッカーはボケ続ける。んで最後にライダーがライダーキックで強烈なツッコミをカマす。

この発想はすごすぎる。ヒーローものを見事に漫才に置き換えている。「ヒーローの日常」を映画にまでした松本人志よりも発想的にはすごい。
よく「悪役が輝く作品ほど面白い」といわれるが、漫才に置き換えるとすごく納得がいく。ボケが光ってないと、ツッコミがいくらいいツッコミをしたところで漫才は映えないのだから。

悪だくみ=ボケ、ヒーロー=ツッコミ。すごすぎるじゃないか。「ナイトinナイト」で答えがわからずひたすら「肌着」と書き続けて天丼を繰り返すだけのオッサンではないのだ、松之助は。こんな発想を持った人、他には知らない。