2011年12月24日土曜日

アタシの採点表

最近ずっと「ぼくの採点表」を読んでいます。
とにかく映画を「知る」には、こんな最適な、まあいや教科書ですからね、ずっとほしかったのですが、何しろとにかく高い。そして買うからには最低でも「1940・1950年代編」と「1960年代編」の両方一気に買わなきゃ意味ないと思っていて、となるとマンを越えるんですよね。
しかし最近全巻いただくことになりまして、それで読みはじめたわけです。

んで実際に読み進めると、もう、滅茶苦茶面白いわけです。ある意味参考書代わりにほしかったってのもあったのですが、参考書なんてとんでもない。とにかく文章が面白い。長文も混じりこんでますが、基本は短文。しかもごく簡単にストーリーを紹介してあったりするので論評自体は非常に短い。なのにもう、文章として面白いんです。

一般的には「辛口の映画評」を書くことで有名だった双葉十三郎ですが、今の時代に読むと、辛口といえば辛口なのですが、非常に心地の良い辛口というかちゃんと芸になってますからね。まあそりゃ某巨大掲示板なんか、辛口とはき違えた単なる罵倒が罷り通っていますから。
辛口の中にも愛情がある。というか出来のいい、いわゆる名画といわれるものには絶賛しつつチクリと欠点を指摘し、あからさまに出来の悪いC級作品には全体的にはケナしながらも良い点を指摘する。こういうバランスはすげえなと。

アタシはね、映画のこともここで書いたりしてますが、とてもじゃないけど映画マニアなんて範疇には入らない。特にハリウッド作品やヨーロッパ映画に関しては何も知らないに等しい。一時期昔の洋画を観まくった時期がありましたが、この本でとりあげられている映画の大半は観たことがない、といって差し支えない。
それでも数少ない観た映画で、この本に取り上げられているものと自分の感想を照らし合わせてみると、アタシの感想はそうズレてない、でもまだ見方が浅かったんだなと痛感させられます。
というかこの本は「やたら細かい部分を指摘して悦に入る」今の映画評論への痛烈なアンチテーゼというか、「映画全体を観ることができないから、細かいところを指摘して映画全体がわかった気になってる」、いわば映画を読み解く能力のない人へのカウンターパンチになってると思うのです。

というわけで僭越ながらアタシが「ぼくの採点表」を採点するなら☆☆☆☆★★★。ここは双葉先生にならい、あえて☆☆☆☆☆は避けます。