2009年4月9日木曜日

マチャアキ

マチャアキと順、どっちがリードタンバリンでどっちがサイドタンバリンだったか思いだそうとして夜も眠れない。

今更になるが、去年放送された「生きる」のリメイクには相当失望させられた。ネット上では何故か評判の悪かった「天国と地獄」の方がはるかにマシだった。
が、実際見るまでもないというか、大方の予想はついていた。
これはキャスティングの問題である。
佐藤浩市、阿部寛、妻夫木聡を並べたら、まあそれなりのものができると想像できる。黒澤版とのイメージのズレも少ない。
ところが「生きる」の場合、主人公が松本幸四郎だと聞いて、ああダメだと思った。
これは演技力の問題じゃない。いくら達者な演技をしようとも、あの役を演じるには松本幸四郎では二枚目すぎるのだ。しかも色気も強すぎる。
もうひとり深田恭子もおかしな配役で、あの役はただ快活な感じさえあれば誰でもいいのに、そういうのが一番似合わないフカキョンを使うのは謎すぎる。
今フカキョンといえば何しろドロンジョ様なのだ。そういう肉体をもった、しかも陰のあるフカキョンに松本幸四郎じゃ、どうみても援助交際にしか見えないし、むしろそうならない方が不自然にすら感じる。
あの役は色気のない、しかも快活な現代を象徴するような子、たとえばベッキーあたりがぴったりなのに。
ではあの主人公はといえば、まず二枚目は絶対ダメ。また病気が病気なので、あまりに頑健そうな人もアウト。
年齢的には50後半から60前半ぐらい。志村喬はもっと高齢に見えるが実際はそうでもなく(公開当時まだ47歳!)、またあの時代だからあれでいいわけで、現代が舞台なら若干若い感じの方がいいだろう。
もしいかりや長介が生きていれば、他に候補をあげる必要すらない。実際いかりやは「ザ・ドリフターズの極楽はどこだ」という映画で絶望の縁にたった男がブランコで黄昏るシーンを演じており、まさに一択状態だったと思う。
自分の考えた他の候補者は、たとえばビートたけしだ。あの役は、というかあの作品は一種の喜劇でもあり、軽やかさが要求されるのだが、たしかにビートたけしはそれに当てはまる。しかしややをもすると、たけし色が濃くなりすぎるのではないか。
大滝秀治とかもいいんだけど、ややトシを取りすぎているのと、何だか志村喬がやったののコピーになってしまいそうな気もする。

長い前フリは終わり。個人的に一番ぴったりくると思ったのは堺正章である。
まず二枚目でない。細身で適度に痩せこけている。エロキューション(発声)が独特、喜劇的演技も得意。色も強すぎない。年齢も合致する。
もちろん自分が、あまり意識することはなく近年気づいたのだが、ずっとファンだったということもある。
昨年やった主演ドラマ「無理な恋愛」はところどころ面白いシーンもあったが、全体としては凡作で、しかも責任の一端はマチャアキにもあった。
マチャアキという人は万能選手のようだが、こと演技に関しては不器用で、お涙頂戴的なシーンになると途端に見てられなくなる。
この人の本当の持ち味は、馬鹿っぽいというか奇抜なことをすればするほど行間から哀愁がにじみ出てくる。
実は「生きる」はそういう話で、志村喬の演技はあきらかにやりすぎというか、ほとんどコントなのだが、やりすぎなのが後半活きてくる、というとんでもない構成になっている。
もしマチャアキが主人公をやれば、前半をコントすれすれにしてしまっていい。ただし周りは真面目に、セットはがっちりやる前提で。その方が後半のハッピーバースデイからディスカッション部分の、目の色が変わった主人公の行動がより引き立つと思うし。

しかしまあ、こないだドラマにしたばっかりで、またすぐにリメイクはないわな。そういやハリウッドでやるって話はどうなったんだ。ま、どうなろうが知らんけど。