2009年4月7日火曜日

采配

万人が納得することなんて絶対ないと思うが、もしあるとするならどういうものなのか考えると夜も眠れない。

WBC騒動もひと息ついたようで、今なら水差しにならないだろうと思うので、一言二言書いてみよう。
阪神タイガースの岩田に肩の故障が発覚した。実にかわいそうなことだ。というのもこれは防げた怪我だからである。
岩田は阪神では先発オンリーの投手であり、中継ぎの(しかも重要な場面の)経験は皆無といっていい。
だから岩田を中継ぎで使うこと自体が間違いだ、とは思わない。しかし先発専任の投手に中継ぎをさせるのはことさら慎重にやらなければいけないのである。
第二ラウンドの韓国戦、交代の場面の直前、岩田はブルペンにいなかった。一度肩はつくっていたようだが、それでもあきらかに準備不足のままマウンドへあがった。
本来岩田は、精密機械といわれるようなコントロールはないが、連続四球や押し出しをするほどコントロールに不安のある投手ではない。事実緊急召集された合宿でも誰よりもWBC球に合い、まとまったコントロールを示していたらしい。だからこそ代表メンバーに選ばれたのである。
準備不足といえば北京五輪の涌井もそうだった。ブルペンで投げてない状態で登板させられ痛打を食らった。
これがもし中継ぎ専門の投手ならどうか?仮に交代時点でブルペンで投げてなかったとしても、岩田や涌井のようにメロメロにはならなかったはずだ。
事なきを得たが、決勝の9回のダルビッシュもそうだ。「左打者のままなら杉内続投、右の代打がでてくればダルビッシュに交代」というのはリリーフ専任でない投手にとって肩のつくり方もモチベーションのもっていき方も難しすぎるように思う。
岩田は大変なことになったが、幸い涌井やダルビッシュは何ともなかった。とはいえ点を取られたことには変わりない。

問題は原がそれをわかっていたかどうかだ。こういう大事な試合だからこそ緊急登板というのはありえるわけで、それだったらなぜ、少し力が劣っても普段から中継ぎをしている投手を選ばなかったのだろう。
正直内海や小松を選んだことに何の意味もなかった。もちろん実力はあると思うし、長いシーズンなら主戦となるのは間違いない。しかし短期決戦においては役に立つとは思えないのだ。
たとえば加藤大輔や永川の方がよほど使い勝手がよかったと思うし、左でいえば武田勝や江草、星野といったところを入れるべきだっただろう。
これらの投手は緊急登板でもある程度自分の力が出せる、そして怪我のリスクが大幅に少ないというのがある。
おそらく原は去年の日本シリーズでの西武ライオンズの継投を見ていけると思ったのだろうが、あれはこれで終わり、というのがあったからこそできた継投だ。(アジアシリーズはあったけど)
しかし今回の場合、WBCが終わってもシーズンが目の前に迫っているわけで、まあこれは開催時期そのものにも問題があるわけだが。

最初、涌井にしても岩田にしても杉内にしても、球数制限の関係から「第二先発」という位置づけだったはずである。それがいつの間にか普通の中継ぎ扱いになってしまい、終盤、それもイニングの頭からではなく、ランナーを背負った場面での登板ばかりになってしまった。
もし内海や小松の代わりに中継ぎ専任の投手を選び、涌井、岩田、杉内が第二先発という役割だったなら、今回の岩田の怪我は防げたような気がする。

しかしこれらのことは勝ったからいえることである。いわば残された唯一の課題(いかに怪我人を出さずに優勝するか)でしかない。
もう日本は「優勝を期待されるチーム」から「優勝しなきゃいけないチーム」になったのだ。それは次の大会に、仮にイチローが出なかったとしても、だ。
誰も怪我人を出さずに優勝する、こんな難しい難題をつきつけられたチームを他に知らない。