2007年5月22日火曜日

満腹<2>(続・テストパターン)



いい加減、このタイトルも何とかしなきゃいけないのだが

わざわざ考えるのも面倒くさい。※

こんな私だが、ついに今日、フィルムを現像に出してきた。

仕上がりは金曜日。もう何を撮ったか忘れてしまったので

逆に楽しみになってきた。

前回の沖縄話の続き。

知らない土地に行くと、まず気になるのが

そこでしか食べられない料理である。郷土料理というやつか。

しかし私のこの気持ちは、上陸して最初の食事で

かなり萎えてしまった。

もう何を食べたのかも忘れたが、とにかく量が多かった。

食堂のおばちゃんは親切な人で

「おなかがふくれてきたのなら、島とうがらしをかけるといいよ」

と、アドバイスしてくれた。

ちょっぴりかけてみた。

うん。たしかにピリッと辛くなって

わずかながら、食欲が復活してきた。

ここで最後までふんばるなり、残すなりすればよかったのに

もう少し島とうがらしをかけてみよう。

そうすればもっと食欲が増すはずだ。

馬鹿だった。

といっても辛くなりすぎたわけではない。

島とうがらしは唐辛子を泡盛につけ込んだものである。

私は下戸ではないが、けして強い方ではない。

つまり酒臭くなってしまったがために

まったく手がつけれなくなってしまった。

「沖縄の現地料理は危険だ」

自分の無知とさじ加減の悪さを棚に置いて、何をいってるのだ。

これが昼食の話。夕食はもっとすごいことになった。

「店の前にタクシーが停まっている食堂はおいしい」

どっかで聞いた仮説だが、私は結構これを信用している。

実際、まったく見知らぬ土地で、タクシーの停車台数だけを

頼りに入った店は、大抵<当たり>だったからだ。

この日も、タクシーを目印に

「ふつうの」食堂を探していた。

現地料理に懲りた私(と同行したカメラマン)は

とにかくふつうの定食とかが食べたかったのだ。

店に入ろうとした。親子連れが出てきた。

昔の酔っぱらいが持っていそうな折り詰めをぶらさげている。

「そうか、持ち帰りたくなるぐらいおいしいんだ」

私の自信は確信に変わった。

その時点で21時すぎ。お昼を食べてから何も食べていない。

腹ペコの私は、ソーキソバとBセットなるものを注文した。

同行の男(Nとしておく)は

「あまり腹が減ってない」とソーキ<汁>と

同じくBセットを注文。

「現地料理はこりごり」といっておきながら

いきなりソーキソバを頼むのは支離滅裂だが

旅とはそういうものだ。

ソーキソバが来た。

うまそうだ。

食った。

うまかった。本当にうまかった。

ところがである。途中である異変に気づいた。

かれこれ10分近く麺をすすっているのに

ソーキを食らいついているのに

一向に減る様子がない。

「しまった。自分もソーキ<汁>にすればよかった」

あまり腹が減ってないといったNは落ち着き払って、こういった。

「一緒ですよ。麺の代わりに豆腐が入ってるだけだから」

やばい。やばすぎる。食っても食っても終わらない。

もう島とうがらしの失敗はしないとしても

ほとんど手をつけてないかのように見える

ソーキソバを置き去りにして帰れるわけにはいかない。

その時だった。

「Bセット2つ、お待たせしました~!」

山盛りの、トンカツ、スパゲティ、野菜炒め、ご飯

その他もろものが、幅30cm、奥行き10cm、高さ3cmほどの

四角のお重に鎮座していた。

ふと辺りを見回した。

ひとりの外国人が、ほっぺたをパンパンにふくらませたまま

箸を両手に持ったまま、固まっている。

やがてその外国人は店員を呼んだ。

店を出た外国人の手には、折り詰めがぶらさがっていた。

「そういうことだったのか・・・」

折り詰めのからくりに気づいたのは、店に入ってから

30分ほど経過した時だった。

私とNが店員を呼んだのは、それからほどなくしてからである。




この件で、私はふたつのことを学んだ。

見知らぬ土地でも、飯を食うところぐらいは

下調べしよう、ということ。

もうひとつは、お腹をいっぱいになった外国人ほど

おもしろいものはないということだ。

まだ沖縄話は終わらない。




※最初は「続・テストパターン」のタイトルのエントリでした。