2007年5月16日水曜日

満腹<1>(テストパターン)



しつこくて申し訳ないが、まだフィルムは私の鞄で眠っている。

「面倒くさい」

そのひと言で、すべて片づけてしまう。

そういう性格なんだね。しょうがない。40年近く生きてきて

もう今更変えようがない。あきらめるしかない。

私が大学生の頃の話だ。

とあるディスプレイの会社でバイトしていた私は、会社の人から

<特攻隊>と呼ばれていた。

勇敢な響きだが、その実、ちっともカッコよくない。

そのバイト先は日払いで給料をくれた。

貧乏だった学生には何ともありがたい話だ。

しかも行ける日だけ行けばいい、というのも

都合がいいというか、ありがたかった。

私が<特攻隊>と呼ばれたのは

「行きの電車代しかない状態」でバイトに行っていたからで

日払いのバイト代をもらえなければ、家に帰ることもできない。

せめて帰りの電車代ぐらい、どっからか調達するのが

普通なのだろう。

いや、そもそもそんな状態になるまで何もしない、というのが

どうかしてる。

でもしないんだよ。面倒くさいから。

まずいよな、どうも。

どっから見ても、ロクな大人のすることじゃない。

ここで唐突に、前回の続きになる。

私がカメラマンとして出入りしていた、信じられない会社の話である。

この会社でバイトをして、何がよかったといえば

「前乗り」の仕事があったことだ。

前乗り、つまり撮影場所が遠方の場合

前日から近くのホテルに泊まることになるのだが

前乗りなら無条件で、宿泊費の名目で一万円もらえる。

これはうれしかった。

しかもホテルの領収書なんか必要ない。

仮に3000円のところに泊まれば

7000円はフトコロに入るという算段だ。

いい加減さ、ここに極まり、という感じだが

すべて本当の話だ。

ある日、沖縄に行くことになった。

さすがに沖縄はかなり遠い。

それに私が沖縄に行くのははじめてときている。

なのに前乗りでもらった金しか持っていかなかった。

沖縄は実に雨が多い。

案の定、撮影は延期になり、ホテルに延泊することになった。

だが手持ちの金はない。食費ぐらいはあるが

翌日分のホテルには足りないのだ。

仕方ないので、一緒にいったバイトに借りることになった。

しかも彼は私よりも年下だった。

情けないにもほどがある。

でもこういう人間なんだよ。

「何かアクシデントがあったら」

とか一切考えない。

きっと学習能力がないんだろうね。

さてこの沖縄の旅では、非常に貴重な体験をすることになるのだが

長くなってきたので、次回へ持ち越し。