2009年12月10日木曜日

ミスター

ミスター、それは何かしらの括りの中で象徴的な存在の人物に与えられる称号である。
今までずっと、過去の事例からしか考えられない人に閉口して、あえていわなかったが、彼こそまさしくミスターと呼ぶべき存在だったのだ。
彼の名は赤星憲広。阪神タイガース所属、背番号53。この度引退することになった、あの赤星こそ、ミスタータイガースだった。
ミスタータイガースといえば、阪神タイガースの歌の歌詞にある通り、歴戦の鉄腕強打の選手に与えられてきた称号である。
今までミスタータイガースと呼ばれてきた名選手と赤星は決定的にタイプが違う。
だからなのか、金本は幾度かミスタータイガースと呼んでいいんじゃないかという話題を耳にしたが、赤星こそ五代目ミスタータイガースに相応しいという声はまったく聞くことがなかった。
しかし自分の考えは違う。赤星こそミスタータイガースだとずっと思っていた。
理由は簡単だ。2000年代に入ってから、阪神はずっと赤星のチームだったからだ。
赤星のチームというのは赤星ありきのチーム、赤星がいなければ戦術がまったく成り立たない、そういう意味である。

長らくの暗黒時代を抜け出した阪神は2003年になってセントラル・リーグの優勝を飾ることになる。
FAで金本を獲得、またメジャー帰りの伊良部、そしてトレードで下柳を獲得したことも、もちろん大きかった。
しかし、もしあのメンバーの中に赤星がいなければどうなっていたか、ただの想像でしかないが、優勝までは届かなかったのではないか。
赤星が阪神に入ったことで、阪神の野球は大きく様変わりした。
走攻守、すべてにおいて阪神にとって赤星の存在は突出していた。
また過去にミスタータイガースと呼ばれた選手はけしてチームリーダーとしての資質は高くなかった。しかし赤星は違う。チームリーダーとしての資質も非常に高かった。
そしてこんなに負けん気の強い選手は、それまで阪神にはいなかった。ここが阪神を優勝に導いた最大のポイントだと思っている。

生え抜きであり、打撃成績も、もちろん盗塁も、そして守備も文句なしで、さらに名実とものチームリーダーであった赤星憲広。
いったい彼をミスタータイガースと呼ぶことに何の問題があるというのだろうか。

正直引退についてあれこれいうのは野暮であり、悪者探しをしても何もならない。
だからあれこれいうのは違うんじゃないかという気がするが、これだけはいわせてほしい。

誰ひとり認めなくても、自分の中では五代目ミスタータイガースは赤星憲広である、と。